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ドイツの師走

平日のお昼時。高級化粧品店から、蛍光色のベストを身につけたガテン系の兄ちゃんがでてきた。夏中、そしてつい今しがたまで工事現場で働いていたような浅黒い顔は、どことなく誇らしげだ。その太い指には小さな袋がぶら下がっている。おそらく彼女か、母ちゃんにプレゼントする香水が入っているのだろう。今年はこの瞬間だ。いよいよクリスマスシーズン到来かと実感したのは。

ドイツでは12月に入ると、あちらこちらで招きあう習慣がドイツにはある。アドヴェンツカフェ(クリスマス4週間前からクリスマスまでの間に自宅に招いて手作りのクッキーとコーヒーでもてなす習慣)や、クリスマス当日の家族だけのパーティーの前にと知人間で招きあうのだ。

その際、呼ぶほうも呼ばれるほうも、大変なのがわかっているので、それほど気負わないおもてなしなのがドイツ流である。招待された場合は手土産というか、クリスマス用の小さなプレゼントを準備するのだが、このプレゼント選びは大変だけど、楽しい作業でもある。この時期は一年で唯一、どこの店でも商品が充実しているし、それにドイツでは私が知る限り、プレゼントにお金をかけない。本当に小さな安いものでも、アイデア次第で喜んでもらえる。たいしたものでなくても、その場でプレゼントをあける習慣があるので、そこから話題が広がるようなものだと特に喜ばれる。

私たちのような、それほど人付き合いの多くない日本人夫婦でも、家族ぐるみのお付き合いや、今年お世話になった人、普段なかなか会えないけれどこの時期だけはといった知り合い、学校や幼稚園関係者などの間で招き招かれるのがこの12月。気がつくともう中盤を過ぎたが、この間の息子の幼稚園でのパーティーは面白かった。

歌ったり、遊んだり、サンタさんからプレゼントをもらったりといろいろな催し物があったのにもかかわらず、息子だけは、最初から最後までブッフェの前のテーブルから片時もはなれることなく、もくもくと食べ続けていた。どんなに引き離し、遊び場所に連れて行っても、みんなが集まって歌っているところに入れても、形状記憶シャツのようにまた定位置に戻って食べ続けていた...

サンタさんからのプレゼントは、それぞれのこどもの親が割り当てられたこどものプレゼントを内緒で買ってくることになっていた。りゅうと同じ年のオリビアのプレゼントは木と金具のコンビネーションのすてきなおもちゃがちょうど規定の予算内(5€)で見つかったので、即購入(ちなみに本屋で買った。ドイツの本屋は気の利いたおしゃれな雑貨も売っているので重宝している)。

店のラッピングコーナーでプレゼント用のラッピングをしてもらっていると、値札のシールがバーコードのシールから上手くはがれないので、ふたつともつけたまま、その上に白いシールが張られた。でも値段が透けて見えているし、そんな買い物用のシールがないほうがかわいい。

それははがしちゃってください、といったら、店員は、いえいえ、これがないと交換出来ないでしょう、はがさないでおいておかないと、と。そういえば、ドイツのクリスマス明けは、クリスマス前のレジと同じようにたくさんの人がプレゼントの「交換」のために、列を作る、というのを思い出した。だから、バーコードをつけていたり、交換したいときは言ってね、レシートがあるから、といって保管していたり、そのまま渡したりする習慣があるのである。

さすが、合理的なドイツだなあと思いながらも、最初はどこかしら味気ない思いがしたものだ。しかし、よくよく考えて見ると、いらないもの、欲しくないものをたんすの肥やしにしたり、棄てたりするのはもらったほうも、あげたほうにとっても残念なことである。選んでくれて、もらったことには感謝するけれど、個人的に気に入らなければ、そのお金で自分のより好きなものに変えて満足したほうが、贈った人の思いもお金も生きるのは間違いない。とはいえ、何もかもを交換するのではなくて、主に洋服のサイズや、すでに持っているものの場合ということが多いようである。

この息子の幼稚園のクリスマスパーティーの話の続き。

サンタさんからあのかわいい木のおもちゃをもらったオリビアの様子を息子と娘とばれないようにそーっと観察。包装紙をびりびりに破るなり、親は歓声を上げ、オリビアも大喜びで遊んでいた。大成功。うれしくて写真に収めたかったが、娘にそれはだめと制された。一歳なので何もわからないが、娘にとったらサンタさんからもらったものだから、私たちが買ったようなことがばれてはいけないということらしい。親同士でも誰が誰のものを準備したのかわからないようにしてあるし、詮索もしない。

ところでこのパーティーで息子がサンタさんからもらったプレゼント、それはテディーベアだった。なぜか薄いグレーで、デニムの野球帽をかぶっている。その野球帽にはなんと、金糸で太く刺繍されたドルマークが光っているではないか!そして身に着けている白いTシャツには太く「VIP」と書かれていた... 息子はテディーをそっちのけで、びりびりになった包装紙で喜ぶばかりであった。

私はよかったね~とテディーを眺めつつも、よりによってと心の中は唖然としていたが、贈ってくれた人も、もちろんそれなりの考えがあったことだろう。一歳の子のプレゼントなんて、喜ばれることの方が稀で、ぽい、とされるのが落ちであったりする。これがかわいい、と思ったかの知れないし。いずれにしてもこの趣味では間違いなくドイツ人の親からではなさそうだ。当然レシートも入っていない。このときばかりはレシートをプレゼントにそっと忍ばせておくドイツの習慣のすばらしさを感じたものだ。

しかしーその後すぐに思いなおした。あのテディーはわが家に来るべきして来たのではないかと。りゅうへのプレゼントという名目で親を助けに来てくれた救世主かもしれない。つまりあのドルマーク。現在は万年金欠のわが家の守り神として、キッチンに鎮座していただいている。


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