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Kopf frei (頭を空にして)!

「経験がものをいう」
(が、そうでないこともある)

「2度あることは3度ある」
(が、2度あってもいつも3度目があるとは限らない)

年を重ねるごとに見聞が広がり、知識や経験がふえるのはいいことである。自分の経験や見聞から、時にはネット情報なども加味して、世の中のたいていのことには自分で対処、解決できるようになってくる。しかしそうなってくると、逆に物事を図るものさしが画一的になりすぎてしまうという弊害もある。常に例外はあるし、選択肢も可能性も実は見方によれば無限にあるということを忘れてしまいがちだ。

出産のため入院中に、乳腺炎にかかりかけた。出産後、母乳育児をはじめたばかりの頃はかなりの割合でかかる病気というか、炎症である。生まれたばかりの赤ん坊の飲む量と母乳の出のバランスが一定に保たれるまで、母乳が詰まってしまうことがある。それによってものすごい痛みと同様に悪寒と高熱がもたらされるというやっかいなもの。生まれたばかりのこどもの世話をしながらのこの症状にやられるとかなりの打撃だ。赤ん坊は待ってくれないし、おなかが空けば泣きもする。

一人目のときに乳腺炎にかかったときは途方にくれ、またかなりつらかった。今回は早くに赤ん坊とのペースをつかめたし大丈夫かと考えていたのだが甘かったようだ。最初は産後一ヵ月にかかったものが、前倒しになっただけのようで、7日目くらいに同様の症状がではじめた。胸が岩のように硬くなり、痛い。悪寒もしてきたー。これはまずい、またアレだ!

様子を見に来た看護婦さんに、早速このことを伝えた。一度目に乳腺炎にかかったこと、同じ症状がでていること、すでに悪寒がはじまったので、これからかなり熱が出ると思うので早めに熱さましを処方して欲しい、と。

この乳腺炎には面白いことに、日本でもドイツでも180度(先生や病院によって)違う二つの別の対処がある。ひとつは一時的に(痛みが尋常ではないため)母乳をストップして抗生物質で炎症に対処するというもの、ひとつは詰まっているのだから痛かろうとなんとしても飲まして、出し切ってしまう、というもの。熱が出た場合は母乳がつづけられる熱さましだけ処方してもらう。私は前回同様、後者でがんばろうと決意して伝えたわけである。

思い出してみると、最初の子のときは抗生物質の代わりにクヴァークというフレッシュクリームチーズ(!)を使った。というのも、産婆さんが「昔ながらの対処法」として教えてくれたので、そのヨーグルトのようなチーズで乳房を完全パックしたのだ... かなりこっけいな姿ではあったがもう藁にもすがる思いであったのだ(しかし後ほど担当医には「なぜすぐに受診しなかったの。抗生物質で対処したらすぐに楽になったのに」としかられた。ちなみにドイツでは産婆さんを産前産後の数週間自宅に派遣してくれる。保険適用なので無料。出産自体も帝王切開を含め同様である)

子の誕生や出産、育児にまつわるあれこれには医学や科学では解明されてないことが多く、よって対処法も無限大にある。常に人としての判断力、動物としての直観力の二つが試されているといってもいい。

そして前述の、悪寒が始まった私が下した判断について看護婦さんのいったことは...

「(熱を測って)それほど熱はでてないわね。また乳腺炎にかかると決まったわけじゃないわよ。起こってもいないことを、また起こると決め付けちゃだめ。KOPF FREI(頭を空にしなきゃ)!」

といって、病室に運び込んだのが搾乳用の電動ポンプ。これはまた別の対処法で、詰まりかけの母乳を一刻も早く抜き取ってしまい、かつ授乳を続けることで「需要と供給」のバランスを取り戻すというもの。そして結果は... 治ったのである。悪寒もなくなり微熱も、痛みも、魔法のようにすっと引き、したがって乳腺炎には至らなかった!

ここ一番のときには一旦「頭を空に」してみる。年を取ればとるほど、知恵がついたオトナほど、つい個人的なDATAベースから情報を引っ張って来て、即座に判断を下してしまいがちだ。日本語ではかつての「やわらかアタマ」に値するのだろうか、この「KOPF FREI!」という言葉。これからも問題解決が必要なときには呪文のように唱えようと思う。

写真は病院での朝食。乳腺炎になった、いやなりかけたのはきっとこの食事のせいだとにらんでいる(食事は朝昼晩3種類から選べるーつまり自分で選んだものなのだが)。美しく美味しかったけれど、別の意味でも忘れられない記念の一枚。

ちなみにここは、森の中にある高級住宅街の一角の古城を改造した病院(Park-Sanatorium Dahlem)。外観とホールは重厚なアンティークで、病室はホテルのようにスタイリッシュでモダン、医療設備はドイツの最先端というユニークな病院である。フォトギャラリーに写真を追加したので、興味をもたれた方はぜひご閲覧を。頼りになる看護婦さんたちが大勢いるので、ドイツで出産の場合はおすすめ。






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