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6年ぶりのカウチポテトとある思い出の記録

もしかしたら6年以上ぶりかもしれない。
夜のカウチポテト。

先日、娘がお友達のところに初めて泊まりにいった。ドイツのこどもたちの間ではびっくりするくらい頻繁に行われている遊び。ほかのこどもたちは随分前からしているようだが、娘もとうとう6歳になってお泊りデビューさせることにしたのだ。

というわけで、こどもが生まれて2度目の夫婦だけの夜がきた。ひさしぶりにゆったりした気分でベットミドラーのCDを聞きながら、夫が好きなタイカレー(こどもがいたら食べれない)をつくる。夫が買ってきたポテトチップ(こどもには禁止している)を食べながら、夫はワインでなくウィスキーを買ってきて平和な時間の流れの中で、ゆっくりと「おくりびと」(こどもがいたら観れないストーリー)を鑑賞することに。これは悲しい話ではない。なかなか心温まる話で、夫婦の関係や生死間だけでなく、職業についても考えさせられたものだ。

後から知ったのだが、実は夫も同じプラン(タイカレー&おくりびと)を描いていたみたいだ。夫婦はシンクロすることが多い。食べたいなと思っていたものをどちらかが買ってくることくらいは同じものを食べている以上普通だが、ミンチのパックひとつ冷蔵庫に入っているだけで、ミートソースのパスタで、和風にパスタの上にソースをかける式」の料理を作ることを同時に想像したこともあるし、心の中で歌っていた鼻歌(?)をやめたとたん、その続きを夫が声に出して歌いだしたこともある(正直ぞっとした...しかも夫は音痴なのだ!)

さて、これが2回目の娘のいない夫婦の夜だった。実はこの前に幼稚園の「卒業記念お泊り会」があり、もう一度夫婦だけの夜を過ごしたことがあった。そのときは、この平和な夜と対照的に、とにかくエキサイティングだった...

というのも、前から行きたいと思っていた、「DUNKEL RESUTAURANT(直訳すると暗闇レストラン)」に挑戦したのだ。市場から朝買い付けてきたばかりという新鮮な食材を使ったコース料理を、真っ暗闇(ホントにまったく何も見えない!)の中、普段は一番頼りがちな視覚のかわりに、残りの4感、つまり、触覚、嗅覚、味覚、聴覚を総動員して味わうというコンセプト。このときの感動(この場合の感動はいい意味ばかりではない)は、自ら好んで得たものとしては、生まれて初めての最も強い衝撃だったといっていい。

暗闇のエキスパート、盲人ウェイトレスの肩に手を置き、電車ごっこのように夫と連なってゆっくり暗闇に入っていく。優しく親切な声で、「次は右よ、次は左。もうすぐそこですよ」と、先客のいる感じがするテーブルの谷間をするする抜けていく。着席した段階でもうすでに目が回り、貧血気味で倒れそうに。右も左も上の下もわからない、宇宙空間に浮いている感覚なのである。呼吸が浅くなり、だんだんと苦しくなってくる。怖い.. 一通りパニック状態になり、夫にすがり、訴え、飲み物のオーダー時には夫を通してウェイトレスにすでに戻りたいことを訴えたが、「大丈夫、すぐなれますよ。でもどうしても無理だったら、すぐに外に連れて行ってあげますから安心してください」といわれ、気を取り直して、暗闇に「いる」ことに再挑戦することに。

右手は夫の体から話すことができないまま、テーブルの大きさをつかみ、幸い壁についているテーブルの左側をなぞり、まわりのテーブルの話し声やカトラリーの触れる音に耳を澄ませる。まわりの状況が「目に浮かんでくる」と、すこしづつ落ち着いてきた。なんとかこれなら、もう少し堪えられそうだ。

そうこうしているうちに、前菜が登場。まっ暗の中、どこにも当たらずに、さっとふたりの目の前に置かれたお皿は魔法のようだ。お皿の輪郭をなぞり、ナイフとフォークの位置を確かめて食事を開始。ところがこのあたりから、夫のほうがあやしくなってきた。

つまり、男は怖いものなどないが、実に目に見えるものに頼りがちということだ。想像力がない。女性は、まわりの状況さえつかめばあとは想像力と感覚でなんとか対処できる。が、男は違う。

まず、コップに水が注げないという。どれだけ注いだかわかるように指をコップに入れていたが、結局「わああ」という言葉とともに水があふれ、おそらくテーブルのどこかがびしょぬれの模様。とにかくまわりとのコミュニケーションが必要な私は、味わう余裕などなく食べ物を片っ端から口に入れ始めたが、一方の夫は笑いながら「なかなかお皿の上の食べ物が取れない」などとのんきなことをいっている。しばらしくてもまだ「どこに食べ物があるかわからない」とぼやいているので、私はついじれったくなって、右側にいる彼のお皿を右手で撫で回してみた。どうせ誰も見えないのだし、一瞬のことだ。夫のようにナイフでいつまでガチャガチャ捜索するよりこの方が早い。結果は...「なんだ、もう全部食べてるんじゃない!(笑)」。空になっているのに食べ物を探し続ける感覚、男性ならではである。女性ならすぐに察しがつく(と思うのだが)

メインディッシュあたりから徐々に慣れてきた。「サプライズ」コースを選んだので、メインのお料理は何かわからない。魚か肉かも迷ってしまうほど、動揺している。あるいは舌の感覚が鈍っているのか。二人で相談した結果、淡白な味がしたので、鶏肉だろうと結論付けたのだが、あとで確認したらなんと「ウサギ」だった!

結婚してはや10年。

何かあるたびに夫には頼りに頼ってきたが、のどもと過ぎれば熱さ忘れる、といった感で今日まで忘れていた。その日はまた久しぶりに夫に真正面から頼り切って、なんか懐かしい感じすらしたものだ。

暗闇から脱出した後は、二人でしばらく興奮状態が続き、どこに何が入ったのかわからないくらい、落ち着いて食事できなかったものの、ちかくにある大好きなラーメン屋にも入る気持ちになれず、興奮を冷ましながら一駅多く歩いて岐路につくことに。あれからまたかなり時間がたってしまい、記録しておかねばと思いつつ、今日まで来てしまっていました。


というわけで、長い体験レポートになりましたが、機会があれば、おすすめの場所。グループでの利用も多いようですが、本当に信頼できる友人かパートナーの人と行くことをおすすめします。とにかく自分の性格も相手も丸わかりになってしまう状況なので、付き合いの浅い関係の人にはおすすめしません... あるいは性格判断として割り切って楽しむのもいいかも?!

●Unsicht-Bar (Dunkel Restaurant)
※要予約
http://www.unsicht-bar.com/

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