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KAFFEEHAUS SOWOHL ALSAUCH

2,3日前から朝、息が白くなり始めた。
街路樹の葉っぱを見上げると、ところどころ黄色い。
とうとう、秋がきた。

「名残り雪」ならぬ「名残り陽」が照らす日、まだがんばっているオープンカフェは今年最後の陽だまりを楽しみたい人たちで混雑している。秋の気配を感じるということは、秋のとても短いドイツでは「いよいよ冬」なのだ。

この間は向こうの席からこんな声が聞こえてきた。「娘からクリスマスプレゼントのリクエストがきたよ、一人部屋がほしいっていうんだ」。


子供に物を簡単に買い与えないドイツでは、子供達が自分のほしいものをプレゼントしてもらえる唯一の日、クリスマス。一年間温めたお願い事を発表しはじめるこの時期は親子ともクリスマスに向けて気持ちが高まっていく。早々の難題に、このお父さんはクリスマスまでの約3ヶ月、間取りをどうしようかと頭を悩ますのだろう。娘の成長ぶりを嬉しく想いながら。

このところ日中でも15度くらいにしかならなくなった。きりっと涼しいオープンカフェには、冬の長く暗いトンネルの前で足踏みをしている人の心が集まってくる。

この季節の変わり目は、天気も気分も不安定、したがって洋服ダンスの中も混乱気味。カフェに落ち着いて、見渡してみると、そこに集まる人々の洋服だけで一体今が何月なのか想像できない。Tシャツだけの人もいれば、革ジャンにブーツという重装備までバラエティーに富んでいる。一日で春夏秋冬が体験できる天気の日もあるから、夏の服は完全にしまえず、冬服は全部出せず、あいの服はあってないようなもので、着るものに困ることが多い季節である。ましてや外に座って落ち着くとなるとなおさら、ついTシャツにマフラー、Tシャツに革ジャンという格好になってしまうのだろう。

ドイツのアパートのセントラルヒーティングはたいてい10月から入る。しかし、重厚な石造りに二重窓、厚い壁というドイツの気候に合った頑丈な建築のおかげで暖房を入れなくても部屋はまだまだ暖かい。ドイツ人の知人で、節約のためにどんなに寒くなっても11月までは我慢して絶対に暖房をつけないと公言している人がいるが、ドイツには公言せずともそんな人は多い。節約家でとても堅実である。

真冬にはマイナス10度になったりするが、風もほとんど吹かないし、確かに家の中は暖房をつけなくても日本の家ほど冷え切ってしまうことはない。ドイツと言うと「冬は寒いでしょう」と想像の中で身震いする人もいるが、実際は一年の中で一番大きなウェイトを占めるドイツの冬は快適に過ごせるような工夫が沢山ある。知り合いの親日家ドイツ人達も、はじめて日本の冬を体験したときは、家の中の寒さに閉口したという。冬に備えたドイツの家の造りとは違うのだから仕方がない。

こちらの暖房はたいていお湯を循環させて温かくするヒーターで、建物全体が自然に温かくなりエアコンやガスヒーターによる乾燥に悩まされることがない。ドイツでは暖房を入れなくても室内が日本のように冷たくなることはなく、夏でも冬でも羽毛布団一枚で寝ている。

ちょうどこの季節、各家庭に暖房が入る前に一足先にお目見えするのが、オープンカフェやレストランのガスヒーターである。秋冬のシーズンオフのカフェで情緒をかきたててくれるこのヒーターは、とても優秀。写真の中央あたりに並ぶのがこちらではおなじみのそのヒーター。

高いところから空気を温めているのだが、真下にいると温風に顔が赤くほてるくらいで席をずらしてしまうくらいの威力がある。ものすごい火力なので、燃料代も相当かかっているはずだが、当然それがカフェの値段に反映することはない(念のため)。

冬の薄曇の日、熱々のホットチョコレートをその季節の、冷たい新鮮な空気を感じながら飲む楽しみを知ったのはこの暖房に出会ってからである。外で飲む方が、暖房の効いた店の中で飲むよりもずっとおいしく感じられる。

正直言って、ドイツに来た頃はそこまでして、外でお茶をする必要があるのか、やせ我慢しているようで滑稽に見えたものだが、実際体験してみるととても気分がいい。寒くなって家にこもることが多くなる季節、いい気分転換になる。店によっては、背の高いこのガスヒーター以外に、各イスの背に赤やブルーの毛布をかけていてくれる。ひざ掛けである。通りがかりに、ガスヒーターがたち、カラフルな毛布のかかった椅子が並んで待っているカフェを見るだけで、なんとなく気持ちが温かくなる。

ドイツは環境大国として名高い。エコロジーや省エネ、リサイクル、環境保護対策などでは世界の先進国の中でもトップに立ち、この分野では外国からの視察団が今も後を絶たない。市民レベルでも環境保護の意識が強く、エネルギーの節約、ごみの分配、リサイクルにも熱心なドイツ人。その結果、生活に無駄がなく、シンプルで(質素で)、一見ストイックに見える彼らだが、人間の自然の欲求には従順で、生活に快適さを求めるという点でのこだわりはとても強い。

はっきりいって、オープンカフェの冬の暖房など、不必要なエネルギーの無駄遣いで地球にも不親切であるが、誰もそれを指摘しない。カフェは日本のコンビニと一緒、ドイツには星の数ほどあって室内の席で全国民を十分まかなえるに足りるはずなのだから、ここでは人の気持ちのよさを最優先しているのだろう。ドイツ人は自然や散歩、フレッシュな外気が本当に大好きなのだ。しめるところはしめ、使いたいところには躊躇なく豪勢に使うドイツ人の性格があわわれている。

冬のオープンカフェにも驚いたが、この「温かさ」を知った後に納得したドイツ人のもう一つの楽しみ方がある。「雪のバーベキュー」、雪で覆われた庭でのバーベキューパーティー。さすがに私はまだここまでは到達していないが、手始めにある冬の夜のパーティーでテラスにドイツの冬の名物、グリューワイン(赤ワインにスパイスを混ぜ温めたもの)をセットしてみた。

電気コンロの上にホットワインが入った大きなお鍋をかけ、お味噌汁のおたまにありあわせのカップを並べただけの我流(というかいんちきである)が、お腹が一杯になって、沢山おしゃべりをした後に、冷たいが気持ちいい外の空気にふれる「用事」があるのは好評で、寒さに震えるのもみんなと一緒だと楽しい。

鍋からは大きな湯気が、各カップからは小さい湯気が立ち上り、人の吐く息の白と一緒になって辺りが真っ白になる。しんしんと冷える冬の夜、澄んだ月夜を見上げて飲むホットワインは、心と体を芯からあたためてくれた。

写真(2枚共)のカフェは、文化人が好んで通うカフェというだけあって落ち着いた雰囲気が漂い、いつも混んでいる。店内は新聞に目を通す一人客が多い。インテリアは茶とからし色が基調のラフなもの。豪華なシャンデリアと壁に描かれたクリムトのレプリカが目を引くが、派手さはなくあくまでもシック。スノッブな雰囲気は全くない。このあたりで有名な自家製ケーキは、隣に併設のベーカリーで持ち帰りにすると50セント(約70円)ほど安い。旧東に位置するカフェでは今、一番のお気に入り。(Sep.2005)

  • 03.Apr.2009
  • by aya