berlin cafe and more

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Schwarz sauer

カフェはコーヒーそのものを味わう場所だとは思っていない。カフェの醸し出す雰囲気を味わいながら会話をする場所、だれか又は自分と。

そんな風に思う人にはぜひ足を運んでほしいのが、ベルリンで一番アヴァンギャルドな地区、プランツラウアーベルグにある「SCHWARZ SAUER」。

ベルリンは古くから移民や難民を積極的に受け入れてきた土地柄、現在人口の約10%が外国人というマルチカルチャーなコスモポリタンである。多くの外国人アーティストやはたまた同性愛者たちを惹きつけてやまないのは、この街の歴史がはぐくんできた自由な気風に他ならない。

ちなみにベルリン現市長はゲイとしてカミングアウトしており、さらにそれによって支持率が上昇したことは周知の事実である。

それはさておき、そんな街ゆえ、ベルリンとひとことで言っても多種多様な顔があり、旧西、旧東という分類だけでなくその中でも地区によって(東京と同じように)趣がまったく異なっている。花の都パリ(大して花はないが)、水の都ヴェニス(沈みながらも)、などと安易に名を付けられない、肩書きのない名無しのごんべ・ベルリン。そしてそれを誇りに思っているかのような、愛すべき街。

典型的なという言葉はベルリンを表す言葉としては使用不可能のようであるが、例外を認めてもらうとすればこのカフェこそ「典型的な旧東ベルリン」のシックなカフェと言わせてもらおう。とてもベーシックだが冷たくはなく、古いが汚くなく、チャームポイントは色があせたような茶色いトーンの内装と、ぴかぴかに磨きこまれたガラス(ドイツ!)、そして客層である。

わりと有名なので観光客もよく見かけるが、地元民にもこよなく愛されるカフェ。ここから通りを眺めれば美術館や博物館に行くよりも、ずっとベルリンを、旧東の雰囲気を感じることができる。

先日は、ここである風景を見かけた。

20台後半頃だろうか、男性の二人連れがそれぞれベビーカーを引いてやってきた。楽しそうに会話しながらそれぞれ注文したケーキを食べ始めるとまもなく、ひとりの赤ん坊が泣きはじめた。すると、すぐにもうひとりの赤ん坊がつられて火がついたように泣きだした。二人の男性はケーキを食べていた手を止め、同時にごそごそとかばんを探りベビーフードをだしテーブルに並べると、それぞれ赤ん坊をベビーカーから引っ張りあげ膝に抱き、残る片方の手で上手に食べさせていた。

幼子をもつ母として、この鏡のような平行作業をほほえましくもはらはらして見ていたのだが、本人たちは不器用なりにも手馴れた様子。赤ん坊たちはひとしきり食べると、こんどは同時にまどろみ始め、だらりとした小さなふたつの体は、またほぼ同時にそれぞれのベビーカーに収められたのである。お見事。この結末にもう少しで拍手するところだった。

さて、この赤ん坊たちには(おそらく)母親がいないわけではない。男女平等に雇用の機会があった旧東時代の名残で、旧東の人にとっては女性が出産後も働くのは当然のことという意識がある。つまり子育ては母親だけの仕事ではないという考え方。

旧東のこのあたりを昼間歩くと、一時間に最低一度はベビーカー&お父さんに出くわす。聞くところによると、家では自然に女性が子供の面倒を見ることが多くなるため、パパが子供を連れて散歩にでかけ、休日にはママを休ませているらしい。もちろん平日は保育園である。生後8週間から預けられるフルタイムの保育園は、旧体制の名残で今も旧東地区に多い。

もちろん、みんながみんなそうでもないし、この地区は壁が崩壊してからはベルリンの一番人気のエリアとあって、旧西の人や外国人も沢山移り住んできた。しかし、今ならまだここでお茶しながら道行く人を眺めるだけで、旧東文化が垣間見れて面白い、絶好のカフェ・スポット。

さて、10年後はどうなっているだろうか。

そんな想像力もかきたてられるし、その変化した顔を見に遠い未来にも又訪れたくなるカフェである(Aug.2005)

  • 03.Apr.2009
  • by aya