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Cafe am Postfuhramt

秋の青い高い空。シーズンが終わってしまう前にオープンカフェを満喫しておきたい。遠出の散歩帰りに、カフェの密集地区Oranienburger通りで路面電車を降りた。

とりあえずはTucholsky通りに向かってどのカフェに行こうか考えながら、ベビーカーかを引いて歩いていると、しとしとと雨が降ってきた。あ、雨だ。

そう思った瞬間には大粒になり、地面は瞬く間に真っ黒になっていく。傘も差さずに身軽に走り抜けていく若い男や、地元民より天気に詳しい観光客の落ち着いたレインコート姿の脇で、ベビーカーの下からもたもたと雨用カバーを引っ張り出し、いつものことながら上手くかぶせられずにずぶぬれになる。

雨量がいよいよ増えてくると、やっとのことで広げた小さな折りたたみ傘も用を足さくなってきた。とりあえず前へと進んではみるが、もうすっかり体が冷えきっている。途方にくれて立ち止まり、傘をふとあげると、目の前に手書きの大きな「CAFE↑」の看板。10段ほど階段があるが、そんなことはこの際かまっていられない。とにかく屋根のあるところに入らなければ。手伝ってもらってベビーカーを運びあげた。

そういうことでもなければ、敷居をまたぐこともなかったかもしれない。ここは元郵便局関連の建物というくらいしか知らなかったのだが、なににしろここの重そうな扉はいつも硬く閉ざされていたし、人気もなかったのだ。ところが、この雨の日、たまたまその扉が大きく開いていて、内外に人がたむろしていたのが幸いだった。人の集まるところにはもちろんカフェの影ありき。

調べてみると、ここはかつては郵便馬車厩舎とその御者の共同宿泊所だったらしい。郵便物が馬を使って運搬されていたときの話であるからずいぶん昔の話だが、当時は約250馬分の郵便馬車が収容できたという。

何かの折に、道路を挟んで向こう側の歩道を通るたびに、いつも思いがけずにシャッターを押していた。ただ純粋に、建物として美しい、そう感じる衝動からである。建物のある側の道を歩いている時は、建物が大きすぎ、至近距離で被写体として目に入ってこない。しかし、道の向こう側から眺めるとちょうど建物全体が視界に納まる。だからここを通る機会があるたびに、ついシャッターを押してしまうのだ。

写真に収めて改めてみると立派に見えるのだが、実際に街角で見るとそう派手ではない。ベルリンのシンボルマークであるテレビ塔が顔を出し、シナゴークが金色の尖塔を輝かせているオラニエンブルガー通りにあって、このかつての郵便馬車厩舎は実はかなり地味な存在だ。しかし、抗いがたい魅力がある。

それは素顔の美しさと似ている。飾り立てられ、演出されなくても、あるいは宣伝の中で作り出される付加価値がなくても、そのもの自体が美しく輝いてしまうというような。人の目を気にせずにただマイペースでやっているだけで、いつのまにか周囲を惹きつけてしまう美しいひとがいるように。

第二次世界大戦中にはかなりの被害を受けたため再建されたものらしいが、旧東時代を経て、2005年にドイツ郵便局が建築関係の組織に売却した。その後内部の改装を得て現在は写真展などのギャラリーになっている。ベルリンの比較的新しい文化発信地として密かな注目を浴びているようだ。

イタリアルネッサンス様式の建物は、1875年から1881年にかけてCarl Schwatloの構想により建設された。装飾のレリーフが特に貴重なものらしく重要文化財として保護されている。

しかし中に入ってびっくりするのはその簡素さ。エントランスホールを含め、室内はコンクリートの打ちっぱなし。カフェはセルフサービスで値段も安い。グレーのコンクリートに映える消火器の赤がモダンアートに見えるほどコンテンポラリーなカフェ空間は、幾時もの時代の交錯の中から浮きあがってきた異次元のようだ。(Sep.2006)

  • 02.Apr.2009
  • by aya