berlin cafe and more

Click an image, and you will see it large!

Die Fischerhuetten am Shlachtensee

 ベルリンに来て一ヶ月という日本人の方を紹介された。高い志をお持ちの優秀な文化関係の方で任期は一年のMさん。

 

ベルリンにはじめてくる人や、住んで間もない人にまず聞いてしまうのは「ベルリンの印象はどうですか」。Mさんは声を弾ませて「ものすごく緑が多いですよね。どこ歩いても緑があるからすごく気分がいい」と嬉しそう。ほっとすると同時に私も一緒に嬉しくなった。

 

住めば都の愛すべき街ベルリン。

 

現在のわが街ゆえに、たぶんひいきめに見てしまっているところもあるだろうし、旅行者の客観的な目にベルリンがどう映るのか気になるところ。よいコメントをもらうとつい調子に乗ってその印象を助長するための話をしてしまうし、そうでない場合は誰に頼まれなくとも言い訳するかもしれない。

 

かも知れないというのは今のところネガティブなコメントはもらったことがないから。好みもあるとは思うし、「暗い」「壁」「社会主義の時代があった(といっても東側のことであり、思い描かれているものと事実との間にはかなり隔たりがあり偏見も混じっているのだが)」など、ベルリンの言葉から来るイメージがあまりよくなかった人が多かったこともあるだろう。 

 

実際のベルリンはいろんな人の想像よりもうんと明るく、安全で、整然としたところとごちゃごちゃしたところを包括した面白味のある街。自分が感じることには限りがあるようで、他人が見たベルリンの話を聞くたび新たな発見や驚きがあって楽しい。なぜかベルリンにこられる方は博学の方や感性の豊かな方が多く、勉強ぎらいな自分でも知らないうちにベルリンの新しい見方を習っている。

 

月の初めには建築に造詣の深い知人、N氏が日本からベルリンの新建築郡を見にきた。

 

彼は建築の素晴らしさはもちろんのこと、旧東西関係なく治安がいいことにとても驚いていた。彼は夫と共通の古くからの知人でかつては彼と同じくローマに住んでいた時期がある。他のヨーロッパの都市からドイツに入ってきたり、他国をよくご存知の方にはドイツやベルリンの街の清潔さや、治安のよさが際立って感じられるようである。これで首都で、これで観光都市なのだ。

 

N氏の滞在は5日。通常は一つの街を見るには十分の長さかもしれないが、ベルリンは東京23区の1.5倍という広さ。あっという間に持ち時間がなくなりいくつかの建築は次回に持ち越しということになってしまった。そのN氏の貴重な時間を彼の希望で半日緑の中で割くことになった。

 

私が選んだのはここ、旧西の端に位置する森の中にあるシュラヒテン湖畔の散歩(とはいっても私のターゲットは緑ではなくひそかにその途中にある「Der Fischerhuette(漁師小屋)」でのランチとお茶だったのだが)。

 

ここがベルリンのすごいところなのだが、この森の湖までは街の中心から頻繁に走るSバーンという電車でたった30分程(通勤時間より短いではないか!)。 湖の名と同名の駅のまん前に芝生の広場があり、夏には日光浴する人やピクニックの家族でにぎわう。その芝生のすぐ向こうが写真に映る湖で水面に向けてなだらかにな坂になっている。つまり駅をおりたらすぐに湖。電車の窓からも見えるが芝生を横切るともうそこが水辺である。そこから湖沿いに緑のトンネルを15分歩くとその漁師小屋に到着。

 

この年になってはじめて知ったことだが、何度同じ場所に行っても自然は見るたびに色や様子が違っていて飽きることがない。たった2週間前にもベビーカーを引いてきたばかりの場所だったが、茶色い落ち葉が小道を覆い空気も透明感を増していた。湖に照りかえす陽光はすっかり柔らかくなっていた。

 

このカフェ・レストランは3段構えになっている。湖に一番近いところの席はセルフサービス。それを取り巻くようにちょっと階段を上がった高台のところにも同じくセルフサービスの席。そしてここにセルフサービスのスタンドとチキンの丸焼きのスタンドがある(街で売っている安いチキンのグリルとはわけが違うおいしさ)。

 

普通の4人がけのテーブルやデッキチェアや木の長いベンチなどいろいろな席があり、席数はとにかく多くざっと1000以上はあるだろうか。夏の週末はほぼ埋まっているが席はどこかにとりあえずあるというくらいの広さで、子供や犬がかなりの割合でお目見えしちょっとした夏祭りのようである。そのまた一段高いところにちゃんとサーブしてくれるカフェ・レストラン部門がある。ここも外に張り出した大きなテラス(ざっと7,80席はありそう)と店内の2段構えだが、店内からでも緑いっぱいの環境が見渡せるような席がたくさんある。

 

N氏はここで始めて典型的なドイツ料理、シュバイネブラーテンを食べて「イギリスの料理ほど悪くないねえ」とヨーロッパで悪評の高い国の料理を引き合いに辛口のコメント。しかしドイツ人のボリュームにもかかわらず、やがてそのお皿がきれいに空になっているところをみると、彼がもっとも愛するイタリアの食事にも引けをとらなかったと推測。今頃イタリアを旅行しているはずなので、帰った頃にこれに関してはメイルで追跡調査をしてみたい。

 

「ヨーロッパの時間の流れはいいね」と湖を取り巻くテーブルを囲む人々を眺めながら、すっかりなごんでいたN氏の横で私はちょっとばかり恨めしいような気持ちになっていた。この日は会社を休んだ平日だったので、恐らく誰もいないだろうと予想していたからである。ところが週末と余りかわらないように見える繁盛ぶり。たしかに、このようなところに平日に来るに値する(と自分が思っている)頑張ってきた白髪の人は多いが、若い輩もちらほら混じっている... 

 

驚き半分、嫉妬半分。世の中には暇とお金をもて余している人がたくさんいるもんだと感心(憤慨?)していると、「そういう自分も今ここにいるじゃない。あっちだってたまたま今日仕事を休んでるだけかもしれないよ」。いや絶対違う、そんな風には見えない。

 

緑にかこまれた静かな湖を前に、澄みきった高い秋の空をのぞむ。反論する気も理由もなく、ゆっくりした時間の流れのなかでコーヒーを飲み、ひさしぶりにあったわりにはとり留めのない話ばかりをして、また緑の中を15分歩いて帰っていった。駅に、日常にむかって。気分はとてもよかった。(Oct.2005)

  • 03.Apr.2009
  • by aya